相続や転居で引き継いだ空き家がなかなか売れず、お悩みではありませんか。全国的に人口減少や建物の老朽化を背景に、売却活動が長期化するケースが増えています。
そこで本記事では、空き家が売れない主な理由から実践的な対処法、そして放置した場合のリスクまでを体系的に解説します。読み終えるころには、自分の空き家に合った具体的な次の一手が分かりますので、ぜひご覧ください。
空き家が売れない理由

空き家が売れない背景には、建物・立地・価格・権利関係といった複数の要因が絡み合っています。総務省の調査でも空き家数は増加傾向にあり、市場では買い手が物件を厳しく選別しています(※)。ここでは、売却を停滞させる代表的な8つの理由を、実務の観点から整理してご説明します。
築年数が古く建物が老朽化している
築年数の経過による老朽化は、買い手が敬遠する大きな要因です。木造住宅は法定耐用年数が22年(※)とされ、金融機関の担保評価も築年数に応じて下がる傾向があります。
例えば、築40年超の戸建てでは雨漏り・シロアリ被害・基礎のひび割れが同時に見つかることも珍しくなく、購入後の修繕費が数百万円単位で発生します。買い手は修繕費を差し引いて判断するため、成約が難しくなります。
※参照元:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf)
人口減少エリアで買い手が少ない
人口減少エリアではそもそも購入希望者の絶対数が少なく、成約に至りにくくなります。総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると全国の空き家率は13.8%と過去最高で、福井県の空き家率は15.5%と全国平均を上回っています(※)。
需要が細るエリアでは価格を下げても反応が鈍く、販売期間が長期化します。売却戦略では、地域内の実需層に加え、移住希望者や投資家など県外需要にも視野を広げる工夫が求められます。
駅や商業施設から遠く立地条件が悪い
駅や商業施設からの距離は、購入判断で重視される要素の一つです。生活利便性が低い立地では通勤・通学・買い物のいずれにも支障が出て、住宅ローンの審査基準からも外れやすくなります。
具体的には、「最寄り駅から徒歩20分以上」「スーパーまで車で15分以上」といった条件では、ファミリー層の候補から外れやすい傾向があります。立地条件の弱さに対しては、価格や用途提案でカバーする発想が欠かせません。
売り出し価格が相場より高い
相場より高い売り出し価格は、内覧すら入らない状態を招く直接的な原因です。買い手は複数のポータルサイトで類似物件を比較しており、割高な物件は検索段階で除外されます。
例えば、近隣で坪単価20万円の成約事例が続くエリアで坪単価30万円を提示すると、問い合わせ数が半減するケースもあります。売り出し価格は、実際の成約事例と土地の路線価、建物の残存価値をもとに冷静に設定することが欠かせません。
再建築不可物件で購入希望者が限られる
再建築不可物件は購入後に建替えができないため、買い手が大きく限られます。建築基準法第43条に基づいて、建築物の敷地が幅員4m以上の道路に2m以上接することが原則として求められています(※)。
接道要件を満たさない敷地では、原則として建替えや大規模な改築ができません。結果として住宅ローンも組みにくく、現金購入できる投資家など買い手層が絞られるため、価格を大幅に下げないと売却は難しくなります。
※参照元:国土交通省「接道規制のあり方について」 (https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001894185.pdf)
接道義務を満たしていない
接道義務を満たしていない敷地は、建築確認が下りず売却の障害になります。建築基準法上の道路に2m以上接していない土地では建物を新築・建替えできず、金融機関の担保評価も低くなります。
「旗竿地で通路部分の幅員が1.8mしかない」「私道に接しているが位置指定道路として認定されていない」といった事例が典型です。売却前に法務局や自治体で道路種別を確認し、必要に応じて建築基準法第43条第2項の許可・認定を検討します。
※参照元:国土交通省「接道規制のあり方について」 (https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001894185.pdf)
相続登記や権利関係の問題がある
相続登記が未了だったり共有者が多い物件では、売却手続きが進みません。令和6年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内の登記申請が求められています(※)。
正当な理由なく違反した場合、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。共有者が兄弟姉妹に分散していると全員の同意が必要となり、意思決定に時間を要します。売却前に権利関係を整理することが不可欠です。
※参照元:法務省「相続登記の申請義務化について」
(https://www.moj.go.jp/MINJI/souzokutouki-gimuka/index.html)
管理状態が悪く内覧時の印象が良くない
管理状態の悪さは、内覧時の第一印象を下げて成約率を大きく落とします。庭木の繁茂・室内の残置物・カビ臭・雨戸の破損などが見られると、買い手は建物全体の劣化を疑い、追加費用を見込んで大幅な値引きを求めます。
逆に、換気・清掃・簡単な補修だけでも印象は改善します。定期的な現地訪問が難しい場合は、空き家管理サービスの利用も選択肢となります。
空き家が売れないときの対処法

空き家が売れない状態を打開するには、価格・物件状態・販売チャネルの3方向から見直すことが有効です。原因を特定せずに値下げだけを繰り返すと、資産価値をいたずらに下げてしまいます。ここでは、実務で成果につながりやすい9つの対処法を順にご紹介します。
不動産会社の査定を受けて適正価格を把握する
まずは複数の不動産会社から査定を受け、市場の適正価格を客観的に把握しましょう。査定価格は会社ごとに数百万円単位で差が出るため、1社だけの意見では判断を誤ります。
机上査定と訪問査定の2種類があり、正確性を重視するなら現地確認を伴う訪問査定が有効です。査定書では、成約事例・公示地価・路線価などの根拠が明示されているかを確認してください。適正価格の把握は、販売戦略を立案するための出発点となります。
売り出し価格を見直す
売却活動が3か月以上停滞している場合は、売り出し価格の見直しが有効です。ポータルサイトの掲載順位は新着物件ほど上位に表示されるため、価格改定によって再び露出を確保できることがあります。
値下げ幅は5%刻みが目安で、心理的節目となる価格帯(例:1980万円→1780万円)をまたぐと反響を得やすくなります。単なる値下げではなく、周辺の直近成約事例と照らし合わせて戦略的に判断しましょう。
空き家の清掃や残置物の処分を行う
清掃と残置物の処分は、費用を抑えつつ内覧時の印象を大きく改善する対処法です。家具・家電・衣類などが残ったままだと、買い手は空間の広さや採光を正しく評価できません。専門業者に依頼するときの費用相場は、戸建て1棟あたり20万から50万円程度(税込)で、リフォームに比べて負担が軽い点が利点です。
以下のポイントを押さえて実施しましょう。
- 室内の残置物を撤去し、床・水回りを重点的に清掃する
- 庭木の剪定と雑草の除去で外観の印象を整える
- 換気を行ってカビ臭や湿気を軽減する
- ポストや玄関周りを清潔に保ち、防犯面の不安を払拭する
ホームインスペクションを実施する
ホームインスペクション(住宅診断)は買い手の不安を取り除き、成約率を高める有効な対処法です。専門家が構造・防水・設備などを診断し、修繕の必要性や概算費用を報告書で提示します。
宅地建物取引業法では、既存住宅の売買時に建物状況調査に関する説明が義務付けられています(※)。費用は5万から10万円程度(税込)が目安で、報告書付き物件は買い手からの信頼を得やすくなります。
リフォームや修繕を検討する
費用対効果の高いリフォームや部分的な修繕は、売却価格を引き上げる手段になります。全面的なリフォームでは投資回収が難しい一方で、水回りの部分改修や壁紙の張替えなら比較的低コストで見栄えを改善できるからです。
予算配分の考え方は、以下の通りです。
| リフォーム・修繕の内容 | 費用相場(税込) | 期待できる効果 |
| 壁紙・床材の張替え | 50万〜100万円 | 内覧時の印象改善 |
| キッチン・浴室交換 | 100万〜200万円 | ファミリー層への訴求 |
| 外壁塗装・屋根補修 | 80万〜150万円 | 建物寿命と資産価値の維持 |
投資回収の見込みを冷静に比較し、過剰投資を避ける判断が欠かせません。
更地にして売却する
建物の老朽化が著しい場合は、解体して更地にする選択肢が有効です。買い手は建物付き土地を購入すると解体費を上乗せで負担しますが、更地なら購入後すぐに新築計画を進められます。
木造住宅の解体費用は坪単価3万〜5万円程度(税込)が目安で、30坪の家屋なら100万〜150万円前後になります。ただし、更地にすると住宅用地特例が外れて土地の固定資産税が上がるため、売却時期と併せて慎重に検討しましょう(※)。
※参照元:国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001712029.pdf)
空き家専門の不動産会社へ相談する
一般的な不動産会社で反響が得られない場合、空き家専門会社への相談が有効な打開策となります。専門会社は再建築不可物件・接道未達物件・築古戸建てなど、通常の流通に乗りにくい物件のノウハウを持っています。
DIY志向の買主や投資家、リノベーション業者などの独自ネットワークを持つため、一般市場では動かなかった物件でも成約に至るケースがあります。地域密着型の会社ほど、地縁を活かした買い手の発掘が期待できます。
不動産会社による買取を利用する
期限を優先する場合は、不動産会社による買取制度の利用も選択肢です。仲介と比べて価格は市場相場の6〜8割程度に下がりますが、最短で数週間の現金化が可能で、内覧対応や契約不適合責任の負担も軽減されます。
仲介と買取の主な違いを以下に整理します。
| 比較項目 | 仲介 | 買取 |
| 売却価格 | 市場相場に近い | 相場の6〜8割程度 |
| 売却期間 | 3か月〜1年程度 | 数週間〜1か月程度 |
| 内覧対応 | 必要 | 原則不要 |
| 契約不適合責任 | 売主が負担 | 免責になる場合が多い |
相続税の納税資金や次の住み替え資金などの資金化を急ぐケースで、買取は有力な選択肢です。福井の空き家の買取価格相場については、以下のページに詳しくまとめてありますので、併せてご覧ください。
空き家バンクや自治体の制度を活用する
民間流通で動かない物件は、空き家バンクや自治体制度の活用が有効です。例えば、福井県では「ふくい空き家情報バンク」が運営され、県内市町の物件を横断的に検索できる仕組みが整っています(※)。
移住希望者向けの支援金や改修補助を用意している自治体もあり、価格以外の魅力で買い手を惹きつけられます。民間仲介と併用可能な自治体も多く、販売チャネルを広げる意義は大きいです。
※参照元:福井県「ふくい空き家情報バンク」(https://akiya.pref.fukui.lg.jp/)
福井の空き家対策については、以下のページに詳しくまとめてありますので、併せてご覧ください。
売れない空き家を放置するリスク

売れないからといって空き家を放置すると、経済的負担や近隣トラブルなどのリスクが高くなります。時間の経過は物件の価値を下げるだけでなく、所有者の責任範囲を広げていきます。ここでは、放置によって発生する代表的な3つのリスクを制度面と実務面の両方から解説します。
固定資産税や維持管理費が発生し続ける
空き家を所有し続ける限り、固定資産税と維持管理費が毎年発生します。固定資産税は課税標準額の1.4%、都市計画区域では都市計画税0.3%が上乗せされ、住宅用地には課税標準額を軽減する住宅用地特例が適用されます(※)。
加えて、火災保険料・水道光熱基本料・草刈りや点検の外注費なども継続的にかかります。年間で数十万円規模の維持費が発生するケースもあり、売却の遅れは資産の目減りに直結します。
※参照元:
総務省「固定資産税」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_15.html)
総務省「都市計画税」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_16.html)
建物の劣化や倒壊による近隣トラブルが発生する
放置された空き家は劣化が加速し、近隣トラブルや損害賠償のリスクを高めます。屋根瓦の落下・外壁の剥離・門扉の倒壊で通行人や隣家に損害を与えた場合、民法第717条により工作物責任として所有者が損害賠償責任を負います(※)。
雑草の繁茂による害虫発生や放火の温床、不法投棄の呼び水になるリスクもあり、地域からの苦情が市町村への通報につながることもあります。所有者の責任は決して軽くありません。
※参照元:e-GOV法令検索「民法」(第717条)(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)
特定空家等に指定され税負担が増える可能性がある
管理不全のまま放置すると、特定空家等に指定されて固定資産税の負担が跳ね上がる可能性があります。令和5年12月13日に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」により、特定空家等に加えて「管理不全空家等」の枠組みが新設されました。
市町村から勧告を受けると、住宅用地特例が解除され土地の固定資産税課税標準額の軽減が受けられなくなり、実質的に税額が大きく増加します。行政代執行に至れば、解体費用も所有者に請求されます。
福井で空き家の売却にお困りなら宮永不動産にご相談ください
空き家の売却が進まない要因は、建物の状態・立地・価格設定・権利関係のいずれか、あるいは複数が重なって生じます。対処法としては適正価格の把握、清掃やホームインスペクションによる印象改善、買取や空き家バンクの併用など、状況に応じた組み合わせが効果的です。放置を続けると税負担や法的リスクが膨らむため、早めの判断が資産を守る鍵になります。
本記事の監修者
宮永真孝(ミヤナガマサタカ)
所属
株式会社宮永不動産
役職
代表取締役
保有資格
宅地建物取引士/二級建築士/不動産コンサルティングマスター/賃貸不動産経営管理士/相続対策専門士/土地活用プランナー/古民家鑑定士/福井県震災建築物応急危険度判定士/一級土木施工管理技士/測量士/コンクリート技師/二種下水道技術検定
自己紹介
土木建設業でコンクリート構造物や土地に関する設計・施工の経験を積み、二級建築士として建築業務にも携わっています。不動産コンサルティングマスターとして資産活用の提案も行うほか、福井県宅地建物取引業協会の理事・無料相談員として幅広い不動産相談に対応しています。建築・土地・不動産の知識と経験を活かし、お客様一人ひとりに寄り添ったご提案を心掛けています。
宮永不動産では、福井の不動産市場に精通したスタッフが、お客様一人ひとりの状況に合わせた売却サポートを行っています。福井県で空き家の売却や活用にお悩みの際は、地域事情に精通した株式会社宮永不動産までお気軽に無料相談をご利用ください。
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