相続した実家や住まなくなった家を売るときに、「税金がいくらかかるのか」と不安を感じていませんか?本記事では、空き家の売却にかかる税金の種類と計算方法、税負担を抑える特例・控除、手続きの注意点を国税庁などの公的情報をもとに解説します。売却前に確認すべき要件と手元に残る金額の見積もり方が分かりますので、ぜひ参考にしてください。
空き家の売却にかかる税金の種類と計算方法

空き家の売却時に発生する税金は、「売却益にかかる譲渡所得税・住民税」と「手続きにかかる印紙税・登録免許税、保有中の固定資産税・都市計画税の精算」に分かれます。税金ごとに課税のタイミングと金額の決まり方が異なるため、順番に確認しましょう。
譲渡所得税・住民税|売却益に対してかかる
譲渡所得税と住民税は、空き家を売って利益が出たときに、利益部分に対して課税されます。土地や建物の譲渡所得は、給与所得などと分けて計算する分離課税の対象です(※)。
- 課税譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
- 税額=課税譲渡所得金額×所有期間に応じた税率
取得費は購入代金や購入手数料など、譲渡費用は仲介手数料など売却のために支払った費用を指します。取得費と譲渡費用を漏れなく集めると、税額を適正に抑えられます。利益が出た年の翌年に確定申告を行い、所得税と復興特別所得税を納める流れです。
※参照元: 国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm)
印紙税|売買契約書の作成時にかかる
印紙税は、空き家の売買契約書を作成するときに、契約金額に応じた収入印紙を貼って納める税金です。平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成する不動産の譲渡に関する契約書には、軽減税率が適用されます(※)。
| 契約金額 | 軽減後の税額 |
| 500万円を超え1,000万円以下 | 5千円 |
| 1,000万円を超え5,000万円以下 | 1万円 |
売主と買主が契約書を1通ずつ保管する場合、各自が保管分の印紙代を負担する形が一般的です。軽減措置には期限があるため、契約時期が近づいたら国税庁の案内で適用期間を確認しておきましょう。
※参照元: 国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm)
登録免許税|抵当権抹消登記などでかかる
登録免許税は、売却に伴う登記手続きで納める税金で、売主側では抵当権抹消登記や住所変更登記で発生します。空き家に住宅ローンなどの抵当権が残っている場合は、引き渡しまでに抹消して買主へ所有権を移します。
抵当権抹消登記と住所変更登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。土地1筆と建物1棟の抵当権を抹消する場合は2個と数え、税額は2,000円になります(※)。
相続した空き家では、被相続人の名義のまま相続登記が済んでいない事例も見られます。売却前に名義と登記簿上の住所を確認すると、決済日の手続きが滞りません。
※参照元: 法務局「登録免許税はどのように計算するのですか?」(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001325693.pdf)
固定資産税・都市計画税|売却時に買主と精算する
固定資産税・都市計画税は、売却した年の税額を引き渡し日で区切り、買主と日割りで精算する取り決めが不動産取引の慣行となっている税金です。固定資産税の賦課期日は毎年1月1日で、1月1日時点の所有者である売主に1年分の納税通知書が届きます(※)。
年の途中で売却しても、市区町村に対する納税義務者は売主のまま変わりません。買主から受け取る精算金は、売買契約にもとづく当事者間の負担調整として扱います。
精算の起算日を1月1日とするか4月1日とするかは地域や契約で異なるため、売買契約書の特約欄で確認しましょう。
※参照元: 総務省「地方税制度|固定資産税の概要」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_08.html)
空き家の売却にかかる税金の特例・控除

空き家の売却で利益が出ても、要件を満たせば特別控除や軽減税率によって税負担を大きく抑えられます。相続した空き家向けと元のマイホーム向けでは要件が異なり、併用できない組み合わせもあるため、代表的な4つの特例を確認しましょう。
相続した空き家の3,000万円特別控除
相続した空き家の3,000万円特別控除は、被相続人が一人で住んでいた家屋や敷地を売ったとき、譲渡所得から3,000万円まで差し引ける特例です。令和9年12月31日までの売却が対象で、令和6年以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は2,000万円までになります(※)。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、区分所有建物ではない
- 相続から売却まで事業・貸付け・居住に使っていない
- 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
- 売却代金が1億円以下である
家屋は耐震基準を満たすか、取り壊して更地で売ります。令和6年以後は、売却の翌年2月15日までに耐震改修や取壊しが完了する場合も対象です。
※参照元: 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)
マイホーム売却の3,000万円特別控除
マイホーム売却の3,000万円特別控除は、自分が住んでいた家屋や敷地を売ったとき、譲渡所得から3,000万円まで差し引ける特例です(※)。住み替えで空き家になった元の自宅も、一定期間内に売却すれば対象に含まれます。
以前住んでいた家屋は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する条件があります。住まなくなった日以後は、家屋をどのような用途に使っても差し支えありません。
転居から売却までの期間が空きすぎると、控除を受けられなくなります。住み替えを検討している方は、転居の段階で売却時期まで計画に入れておきましょう。
※参照元: 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)
10年超所有軽減税率の特例
10年超所有軽減税率の特例は、所有期間が10年を超える自宅を売ったとき、長期譲渡所得の所得税率が低くなる特例です(※)。売った年の1月1日時点で、家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えている点が条件になります。
| 課税長期譲渡所得金額 | 所得税の税額 |
| 6,000万円以下 | 課税長期譲渡所得金額×10% |
| 6,000万円超 | (課税長期譲渡所得金額-6,000万円)×15%+600万円 |
通常の長期譲渡所得の所得税率15%と比べ、6,000万円以下の部分は5ポイント低くなります。マイホーム売却の3,000万円特別控除と重ねて利用でき、控除後に残った利益へ軽減税率を適用します。
ただし、相続した親の家は相続人自身の居住用財産にあたらないため、対象外です。
※参照元: 国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm)
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例は、相続税を納めた人が相続した不動産を一定期間内に売ったとき、相続税の一部を取得費に加算できる制度です。取得費が増えると譲渡所得が減り、税負担も軽くなります。
売却期限は、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです(※)。加算できる金額は相続税額のうち売った財産に対応する部分で、特例を使わない場合の譲渡益が上限になります。
取得費の特例と相続した空き家の3,000万円特別控除は、同じ家屋や敷地について重ねて使えません。相続税の納税額と譲渡益の大きさを比べ、有利な制度を選びましょう。
※参照元: 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm)
空き家の売却にかかる税金に関する注意点

空き家の売却では、所有期間の数え方や取得費の証明、特例の期限と申告手続きを見落とすと、想定より税額が増えるおそれがあります。売却後に気づいても取り返せない項目が多いため、契約前に確認したい4つの注意点を把握しておきましょう。
所有期間によって譲渡所得にかかる税率が変わる
空き家の譲渡所得にかかる税率は、売った年の1月1日時点の所有期間が5年を超えるかどうかで変わります。
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
| 長期譲渡所得(5年超) | 15% | 5% |
| 短期譲渡所得(5年以下) | 30% | 9% |
令和29年までは、所得税額に2.1%を掛けた復興特別所得税も納めます。所有期間は売却日ではなく売った年の1月1日で判定するため、取得から5年を過ぎた直後の売却でも短期扱いになる場合があります。
相続で取得した不動産は、被相続人が取得した時期を相続人が引き継ぎます。親が長年所有していた実家であれば、相続直後に売っても長期譲渡所得として計算できます。
※参照元:
国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm)
国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm)
取得費がわからない場合は売却価格の5%を概算取得費にできる
購入時の契約書が見つからない空き家は、売却価格の5%を概算取得費として計算できます。実際の取得費が売却価格の5%を下回る場合も、5%相当額を取得費にできます。
国税庁の例では、土地建物を3,000万円で売って取得費が不明な場合、150万円を取得費とします(※)。実際の購入価格が分かれば取得費を大きく計上できるため、概算取得費は税額が高くなりやすい方法です。
相続した実家では、被相続人の売買契約書や領収書、建築請負契約書が取得費の根拠になります。遺品整理で捨ててしまうと取り戻せないため、片付けの前に不動産関係の書類を1か所にまとめておきましょう。
※参照元: 国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm)
特例・控除には適用期限や要件がある
空き家の売却に使える特例・控除は、制度ごとに売却期限や建物の条件が細かく定められています。期限を1日でも過ぎると利用できません。
- 相続空き家の特例:相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(制度自体は令和9年12月31日の売却まで)
- マイホームの特例:住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日まで
- 取得費の特例:相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで
相続空き家の特例では、相続後に空き家を貸し出したり、親族が一時的に住んだりすると対象から外れます(※)。売却を決める前に、税理士や不動産会社と要件を1つずつ照らし合わせましょう。
※参照元: 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)
特例を利用する場合は確定申告が必要になる
空き家の売却で特例・控除を利用する場合、税額がゼロになるときも確定申告を行います。国税庁は、一定の書類を添えた確定申告を特例の適用条件として示しています。相続空き家の特例で添付する主な書類は、次の通りです(※)。
- 譲渡所得の内訳書
- 売った資産の登記事項証明書など
- 市区町村長が交付する被相続人居住用家屋等確認書
- 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
- 売却代金が1億円以下であることを示す売買契約書の写しなど
被相続人居住用家屋等確認書は空き家の所在地の市区町村で申請し、交付まで日数を要します。確定申告の期限に間に合うよう、売却後は早めに申請しましょう。
※参照元: 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)
空き家の売却にかかる税金に関するよくある質問

空き家の売却を検討している方からは、利益が出ない場合の扱いや住民税への影響、売却のタイミング、放置した場合の税負担について多くの質問が寄せられます。代表的な4つの疑問に、国税庁などの公的機関の情報をもとに回答します。
空き家を売却して利益が出なければ税金はかかりませんか?
空き家を売却して利益が出なければ、譲渡所得税と住民税はかかりません。譲渡所得は売却額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算するためです(※)。差額がゼロ以下なら、課税される所得が生じません。
ただし、印紙税や抵当権抹消登記の登録免許税は利益の有無にかかわらず発生します。売却した年の固定資産税・都市計画税も、1月1日時点の所有者として売主が納めます。
取得費が分からず概算取得費の5%で計算すると、帳簿上は利益が出るケースもあります。購入時の書類と譲渡費用を集計し、利益の有無を正確に確かめましょう。
※参照元: 国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm)
空き家を売却した翌年の住民税は上がりますか?
空き家の売却で課税される譲渡所得が生じた場合、翌年度の住民税は増えます。個人住民税は前年中の所得に対して課税される仕組みのためです。
譲渡所得にかかる住民税の税率は、長期譲渡所得で5%、短期譲渡所得で9%です。例えば、課税長期譲渡所得金額が1,000万円の場合、住民税は50万円増える計算になります(※)。
3,000万円特別控除などで課税譲渡所得金額がゼロになれば、譲渡所得にかかる住民税も発生しません。翌年の納税で慌てないよう、売却代金の一部を納税資金として取り分けておきましょう。
※参照元:
総務省「地方税制度|個人住民税」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_06.html)
国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm)
空き家を売却するなら何年以内がお得ですか?
相続した空き家は、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却が税負担を抑える目安です。相続空き家の3,000万円特別控除の売却期限が、相続開始から3年後の年末に設定されているためです。
例えば、令和7年6月に相続が発生した場合、特例上の期限は令和10年12月31日です。ただし、制度自体の適用期限は令和9年12月31日の売却までで、延長されなければ令和10年の売却は対象外になります(※2026年9月時点の情報)。
売却活動は査定から引渡しまで数か月かかる場合もあるため、期限から逆算して早めに動き出しましょう。
※参照元: 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)
相続した空き家を放置すると税額は変わりますか?
相続した空き家を放置し、管理不全空家や特定空家として勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れて税額が上がります。勧告を受けた空き家の敷地は、住宅用地特例の対象外になるためです(※)。
住宅用地特例では、200平方メートル以下の部分の課税標準が6分の1、200平方メートルを超える部分の課税標準が3分の1に減額されています。令和5年の空家法改正で、特定空家の予備軍にあたる管理不全空家も指導の対象になりました。
※参照元: 国土交通省「住宅:空き家対策 特設サイト」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/articles/2024020105.html)
放置が長引くと、相続空き家の特例の期限も過ぎてしまいます。売却・活用・解体のいずれかを早めに決めましょう。空き家を放置するリスクと売却・活用・解体の判断軸については、次の記事で解説していますので、併せてご覧ください。
空き家になった実家を放置するリスクとは?初期対応・処分・活用法も解説
福井で空き家の売却にお困りなら宮永不動産にご相談ください
空き家の売却にかかる税金のポイントを振り返りましょう。
- 売却益には譲渡所得税・住民税がかかり、所有期間5年超かどうかで税率が変わる
- 相続した空き家は、要件を満たすと3,000万円特別控除を利用できる
- 取得費が不明な場合の概算取得費は、税額が増えやすい
- 特例には売却期限があり、利用するときは確定申告を行う
株式会社宮永不動産では、福井県内の空き家の査定から相続を踏まえた売却計画づくりまで一貫してサポートいたします。特例の要件と期限を押さえれば、空き家の税負担は大きく減らせます。売却時期や特例の利用に迷ったときは、お気軽に無料相談をご利用ください。
本記事の監修者
宮永真孝(ミヤナガマサタカ)
所属
株式会社宮永不動産
役職
代表取締役
保有資格
宅地建物取引士/二級建築士/不動産コンサルティングマスター/賃貸不動産経営管理士/相続対策専門士/土地活用プランナー/古民家鑑定士/福井県震災建築物応急危険度判定士/一級土木施工管理技士/測量士/コンクリート技師/二種下水道技術検定
自己紹介
土木建設業でコンクリート構造物や土地に関する設計・施工の経験を積み、二級建築士として建築業務にも携わっています。不動産コンサルティングマスターとして資産活用の提案も行うほか、福井県宅地建物取引業協会の理事・無料相談員として幅広い不動産相談に対応しています。建築・土地・不動産の知識と経験を活かし、お客様一人ひとりに寄り添ったご提案を心掛けています。


